
福井県越前市にある 越前和紙の里はご存知でしょうか?
この越前和紙の里は、
・和紙作りを体験できる『パピルス館』
・紙漉きの手わざを見学できる『卯立の工芸館』
・越前和紙に関する資料を展示する『紙の文化博物館』
の施設と、紙祖神を祀る神社などを中心にした『五箇地区』の街並みを散策することができます。
このうち、紙の文化博物館で開催されている特別展示『大ふすま展』と、間近で紙漉きを見学できる卯立(うだつ)の工芸館に行ってきましたので、このページではそれらについて画像とともに紹介していきます。

大ふすま展 ポスター
まずは紙の文化博物館についてです。

紙の文化博物館 外観
現在こちらで開催されている『大ふすま展』は、9月6日~11月11日までの特別展示で、施設の1階、2階合わせて80枚(表と裏で別の作品を張っているので、ふすまとしては40本程)ものふすまが展示されています。
施設の入館料金は『紙の文化博物館』・『卯立の工芸館』との共通入場券で、大人1人300円(特別展示がない時期は200円)です。
入館料を払い、施設内に入るとまずは越前和紙の歴史や、越前和紙ができるまでの行程を紹介したコーナーがあります。
そこを越えた1階部分と2階部分が『大ふすま展』のコーナーとなります。

各ふすまにはそれぞれこのように番号が振られているため、入り口で配布している目録と照らし合わせることで、名称や製作者(メーカー)を確認することができます。
今回の大ふすま展は、越前和紙産地の中でも大判の紙を漉く以下の5社(敬称略)
・株式会社五十嵐製紙
・株式会社岩野平三郎製紙所
・株式会社長田製紙所
・株式会社滝製紙所
・有限会社やなせ和紙
からなる「大紙会」の全面的な協力を得て開催しているということです。
全ての作品を紹介することはできませんが、抜粋していくつかをご紹介致します。
(受付にて、写真撮影、および撮影した写真のネット上への掲載の許可をいただいております)

有限会社やなせ和紙様 「シャボン玉」

株式会社岩野平三郎製紙所様 「鳥の子特一号紙」

株式会社五十嵐製紙様 「花ちらし」

株式会社長田製紙所様 「Triangle」

株式会社滝製紙所様 「雲肌」

株式会社五十嵐製紙様 「蔦」
そして圧巻の四本引きです。

長田榮子様 「藤図」

株式会社五十嵐製紙様 「龍」

株式会社五十嵐製紙様 「鯨」
写真ではこれらの作品の持つ迫力や、越前和紙自体の上質な質感を伝えきることはできません。
こちらの『大ふすま展』は11月11日まで開催しています。興味を持たれた方はぜひ会場まで足を運んで生で見ることをお勧め致します。
続いて卯立の工芸館についてです。
こちらは実際に紙漉きをしているところを間近で見学することができる施設です。紙の文化博物館との共通入場券となっています。

卯立の工芸館 外観
独特な見た目で、玄関正面に卯立を立ち上げた「妻入り卯立」という建築様式だそうです。

庭先に和紙の原料の一つである三椏が植えられています。私は三椏を見るのは恥ずかしながらこれが初めてでした。
さて、この日は大ふすま展の企画で、『東大襖クラブ』様による襖の張替え実演とトークショーが開催されていました。
今回実演をしてくださった東大襖クラブ様はその名の通り、東京大学にあり一般家庭等の襖と障子を張り替えるサークルです。
もともとは戦後の生活費や学費を稼ぐために始まったという60年以上の歴史がある団体です。
今回は鳥の子二号紙を使い、卯立の工芸館のふすまを張り替えるという実演でした。
鳥の子二号紙(三椏)を張り替えに使うのは初めてということで、独特の質感に少し戸惑っているということをお話頂きました。
その他、クラブの歴史や活動内容、和紙を漉くために使用するトロロアオイが無くなるかもしれないので何かできないだろうかというお話等をして頂きました。
貴重なお話をありがとうございました。
その後、伝統工芸士の方が昔ながらの道具を使って和紙を漉く様子を見学させて頂きました。
煮炊いた楮を樫の木で叩解(こうかい)したものを流し漉きにより、一枚の紙にする行程です。
目の前で見る磨き抜かれた職人さんの技は、素晴らしいの一言です。
紙漉き歴60年という紙匠の方の技術、そしてその手が非常につるつるとして綺麗だったことが印象に残っています。
また、施設内には、実際に各行程で使用する道具や、和紙の原料である楮・三椏・雁皮・麻やトロロアオイなどが展示されています。



今回は越前和紙の里の見学を通して、1500年という長い歴史と、最高級の品質と技術を誇る越前和紙の心に触れました。
襖においていわゆる手漉きの「和紙」を使用するという機会は殆ど無く、それどころか襖自体の存続も危ぶまれている昨今です。
建築の様式が変わり、空調設備が発達した今、かつての日本で必要とされていた湿調作用や汚染物質の吸着に優れた襖は、今や必要なものでは無くなっているのかもしれません。
それでも、襖や畳が世の中から無くなり、職人さんが消え、二度と創ることができない技術となるのはとても寂しく悲しいことです。
私だけかもしれませんが、卯立の工芸館の見学中に、襖があり畳があり、土壁があるという環境にふいに「ああ、いいな」という言葉が漏れました。
機能としては最新の技術に一歩譲らざるを得ないのかもしれませんが、それでも襖をはじめとした日本伝統の建築様式には人の心を掴む何かがあるのではないでしょうか。
「襖」そして「和紙」を後世に残すために何ができるか……それを問屋という立場から常に考えていきたいと、今回の越前和紙の里見学を通して強く想いました。
以上、「『大ふすま展』に行ってきました」でした。
ここまでお読み頂き、誠にありがとうございます。