『襖(ふすま)』という漢字について
そもそも『襖』という漢字、そして『襖』そのものを日常で見る機会が減っていますが、『襖』と書いて読み方は『ふすま』です。
この『襖』という漢字は、部屋を仕切るための木製の建具を表しています。

襖(ふすま) 一例今日では住宅の様式も変化してきており、和室に入ったことがない・襖を見たことがないという方もいらっしゃるかもしれません。
『襖ふすま』を『見たことがない』、『イメージができない』という方は、よろしければこちらのページをご覧ください。>>襖・障子(ふすま、障子の役割・歴史)ところでこの『襖』という漢字ですが、今ご覧になっているモニターやスマートフォンでは、どのように見えているでしょうか。
……というのも、こちらをご覧ください。

左側が明朝体の『襖』、右側が教科書体の『襖』です。2つの漢字の違いがわかるでしょうか。
本来『襖』という漢字は衣編に『奥』ではなく『奥』の米の上にノが付いたものが伝統的に使用されている表記となります。ところが『襖』と漢字で入力した際にフォントによってノがついていたりいなかったりするため、表記がバラバラになりがちです。(現在このホームページで設定しているフォントではノが付いているもの(游明朝)を使用しているつもりですが……スマートフォンなどではうまく表示されていないかもしれません。いかがでしょうか。)
このようにフォントによって字体が異なる例としては、他には『葛』や『鱒』などがあります。
「フォントによって表示される字体が異なることがある」ということは、日常生活では気にする場面はないかもしれませんが、覚えておくと看板やのぼりなどを作成する際には役立つかもしれません。
『襖』以外の『ふすま』 -『麩』・『衾』-
さて、『襖』という漢字、『襖』で『ふすま』という読み方というのは覚えていただけたかと思いますが、『襖』以外にも『ふすま』という読み方をする漢字はほかにもいくつかあります。例えば『麩/麬』や『衾』です。
前者の『麩/麬』のほうの『ふすま』についてはこのホームページの別ページで紹介していますので、そちらをどうぞ。>>『襖と関係があるの? 話題のふすまパンとは?』このページでは後者の『衾』の方の『ふすま』についてお話ししていきます。
この『衾』という漢字を日常生活で目にする機会は少ないのですが、しいて言えば合戦などで出てくる『槍衾(やりぶすま)』というときなどに使用します。
『槍衾』とは『(衾のように)隙間なく、大勢が槍を並べている様子』を意味しています。同様に、射手が隙間なく並んでいる様子や、放たれた矢が隙間なく一面に並んでいる様子は、『矢衾(やぶすま)』と呼ぶようです。
また、佐渡島には『衾(ふすま)』、江戸(東京)近辺には『野衾(のぶすま)』という妖怪の伝承があり、両者の姿かたちは異なりますが『顔に覆いかぶさってくる』という点では共通しています。では「たとえに用いられる程度に身近であり、顔を覆えるような形状」の『衾』とはなんぞやという話になるわけですが、簡単に言えば『衾(ふすま)』とは、平安時代などに用いられた布地の寝具です。
今日でいう掛布団のようなものと考えるとわかりやすいかと思います。
現在使用されている建具の方の『襖』も、元々は寝所に使用された障子(建具)ということでの『衾障子』から、織物を使用するため『裏の付いた着物』を意味する『襖』の字があてられ、『衾→襖』と変化していったと考えられています。
また、『衾』に「ふすま」という音があてられたのは寝所「臥す間」から来ているとも言われています。
残念ながら、先に紹介した『麩』と『襖』の関連は見られませんが、『襖』と『衾』には関連があるということになります。
こちらのページも併せてどうぞ。
>>襖・障子(ふすま、障子の役割・歴史)
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